建設業における営業と施工の創造的融合
営業と施工の対立は「情報の断絶」から生まれる
現場で「営業がまた無理な約束をしてきた」という不満が出る会社は少なくありません。しかし多くの場合、営業が悪意を持って無理な条件を約束しているわけではなく、単に現場の制約条件を十分に知らないまま提案しているだけです。逆に施工側も、なぜその工期や仕様で受注に至ったのかという背景を知らずに、不満だけを募らせがちです。対立の根本原因は人の資質にあるのではなく、情報が両部門を行き来する仕組みがそもそも存在しないことにあります。この仕組みの欠如に気づかないまま、対立だけが積み重なっていく会社は少なくありません。
見積もり段階から施工担当者を巻き込む
受注確度の高い案件については、契約前の段階から施工担当者に見積もり内容を確認してもらう体制を持つ会社は、着工後のトラブルが目に見えて減少します。現場を知る人間が事前に工程や仕様の妥当性をチェックすることで、営業だけでは気づけないリスクをあらかじめ潰しておくことができます。一見手間が増えるように見えますが、着工後の手戻りや追加工事をめぐる交渉に比べれば、事前確認にかかるコストのほうがはるかに小さいものだと言えるでしょう。事前確認を制度として定着させている会社ほど、着工後の現場が安定していきます。
施工の知見を次の提案書に反映する仕組みを作る
現場で得られる知見、例えば特定の工法が想定より早く終わった、特定の資材が高騰しているといった情報は、本来であれば次の見積もりに即座に反映されるべきものです。しかしこの情報が現場内にとどまってしまい、営業に届かない会社が数多く存在します。現場から営業への定例的な情報共有の場を設けている会社ほど、見積もり精度が着実に向上し、結果として利益率も安定していく傾向がはっきりと見られ、両部門の信頼関係も自然と深まっていきます。こうした小さな情報共有の積み重ねが、部門を越えた信頼関係の土台になっていきます。
合同の振り返りが次の受注の質を上げる
工事が完了した後、営業と施工が別々に振り返りをしている会社では、同じ失敗が形を変えて何度も繰り返されてしまいます。竣工後に営業と施工が同席し、受注時の見立てと実際の収支や工程のずれを一緒に確認する場を持つことで、双方が次にどう動けばよいかを共有できるようになります。私が200社以上のプロジェクト型ビジネスを見てきた中でも、この合同振り返りを制度化している会社は、着実に収益体質が改善していく傾向が見られました。この振り返りを継続できるかどうかが、次の受注の質を大きく左右していきます。
評価制度も部門横断で連動させる
営業は受注額、施工は工期遵守だけで評価されると、両部門は互いの領域を守る意識が強くなり、協力関係が生まれにくくなります。プロジェクト全体の最終的な収益を、営業と施工の双方の評価に一部連動させることで、初めて両者は同じ方向を向いて動くようになります。部門ごとの個別最適を追いかけるのではなく、プロジェクト全体の最適を追いかける評価設計こそが、こうした創造的な融合を後押しする確かな土台になっていきます。評価の連動は簡単ではありませんが、取り組む価値のある投資だと言えます。
月次の合同会議が現場の温度感を共有する場になる
営業と施工が顔を合わせる機会が半期に一度の全体会議だけという会社では、日々変化する現場の温度感が営業側に伝わりません。進行中の案件について月次で短時間でも合同会議を開き、順調な現場だけでなく苦戦している現場についても率直に共有する場を設けることで、営業は次の提案の材料を得られ、施工側も自分たちの努力が組織に伝わっているという実感を得られます。この積み重ねが、部門間の心理的な壁を少しずつ低くしていきます。小さな対話の場を積み重ねることが、大きな組織文化の変化につながっていきます。
まとめ
営業と施工は、受注と施工という別々の仕事をしているように見えて、本来は一つのプロジェクトを成功させるという同じ目的を持つ仲間です。情報共有と評価連動の仕組みを地道に積み重ねていくことが、両者の壁を少しずつ溶かしていきます。対立から融合へと組織のあり方を変えていく過程は一朝一夕には進みませんが、その積み重ねこそが会社全体の利益体質を確実に強くしていきます。営業と施工は競い合う相手ではなく、一つの成果を共に育てるパートナーなのです。この視点の転換ができた会社から、着実に利益体質が改善していく傾向にあります。