ドラッカーから学ぶ「経営者教育」シーズン2 第8回
結論、経営者の仕事は「弱みの是正」より「強みの発見」
第8回で最初に確認したのは、ドラッカーが説く強みのマネジメントが、単なる精神論ではなく、成果を最大化するための極めて合理的なマネジメント手法だという点です。ゲストの執行役員からは、若手社員の評価面談の多くが弱点の指摘に終始しており、本人が気づいていない強みを言語化する機会がほとんどなかったという反省が語られました。強みは放っておいても伸びるものではなく、上司が意識的に発見し、機会を与えて初めて開花するというのが対談全体を貫いた結論でした。
なぜ弱み克服型のマネジメントが根強く残るのか
弱みの是正に時間を割いてしまう背景には、問題点の方が数字や事象として見えやすく、上司にとって指摘しやすいという事情があります。一方で強みは、成果につながって初めて認識されることが多く、事前に見抜くには本人の仕事ぶりを丁寧に観察する必要があります。ゲストの執行役員は、建設プロジェクトの現場において、コミュニケーションが得意な若手を意図的に顧客折衝の場に配置したところ、数字が苦手だった本人が急速に成長した事例を紹介してくれました。
プロジェクトのアサインは最大の強み発見の機会
対談で特に盛り上がったのは、プロジェクト型ビジネスにおいてはアサイン、つまり誰をどの案件のどの役割に配置するかという意思決定そのものが、最大の強みマネジメントの機会になるという論点です。案件ごとに求められるスキルセットは異なるため、一つの案件では目立たなかった社員が、別の案件では中心的な役割を果たすことは珍しくありません。ゲストからは、アサインを固定化せず定期的に見直す仕組みを持つことの重要性が強調されました。
強みを可視化するためのデータの使い方
強みを勘や印象だけで判断すると、上司の主観に左右されてしまいます。番組内で私からは、プロジェクトごとの担当領域と実績データを蓄積していくことで、その人がどのフェーズやどの業務内容で高いパフォーマンスを発揮しているかが客観的に見えてくるとお伝えしました。私が200社以上の企業を支援してきた経験からも、感覚的な人事配置よりも、実績データに基づいた配置転換の方が、結果として本人の納得感も高いという傾向が明確に見られます。
経営者自身の強みと弱みへの向き合い方
対談の終盤では、部下だけでなく経営者自身が自分の強みと弱みにどう向き合うべきかという話題に移りました。ゲストの執行役員は、自身が数字に強くない自覚があるからこそ、経理財務に強い右腕を意図的に配置してきたと語りました。私自身も、エンプレックスでCFOという立場を任されたのは、創業経営者が自分にはない財務的な視点を補うことを明確に意図していたからだと理解しており、経営チーム全体で強みを補い合う発想の重要性を改めて共有しました。
第8回を通じて見えた組織づくりの示唆
第8回の対談は、強みを活かすマネジメントが個人の成長だけでなく、経営チームや組織全体の設計にも及ぶテーマであることを示してくれました。誰か一人が万能である必要はなく、強みの異なる人材をどう組み合わせるかという視点こそが、これからの経営者教育に求められる論点だという問題提起で、この回は締めくくられました。
まとめ
強みを活かすマネジメントとは、部下を褒めることではなく、成果が最大化される配置を科学することです。弱みを消すのではなく、強みを重ねる。第8回の対談を通じて、ドラッカーの教えが決して古びていない、極めて実践的な経営手法であることを改めて実感する回となりました。