経営陣を束ねる議論と人選
経営陣がまとまらないのは「相性」の問題ではない
経営陣の不和というと、性格の相性やコミュニケーションの問題として片付けられがちです。しかし実際には、意思決定の基準やゴールの共有ができていないことが原因であるケースがほとんどです。誰が何を判断していいのか、何を成功と定義するのかが曖昧なまま集まった経営陣は、些細な意見の違いが対立に発展しやすくなります。まず疑うべきは相性ではなく、議論の土台となる共通言語の有無です。
経営会議で「本音」が出る条件
経営会議で表面的な同意しか得られない企業には共通点があります。それは、反対意見を述べることが個人への評価に影響するという空気があることです。役職や在籍年数に関係なく意見を戦わせられる心理的安全性がなければ、経営陣は最終的に社長の顔色をうかがう場に変質します。本音の議論を生むには、意見の対立と人間関係の対立を明確に分けるという合意を、経営陣自身が最初に確認しておく必要があります。
役割の重複と空白を可視化する
経営陣がまとまらないもう一つの原因は、役割の重複と空白です。同じ領域を複数の役員が担当していると縄張り争いが生まれ、逆に誰も担当していない領域があると責任の押し付け合いが起こります。組織図だけでなく、実際の意思決定プロセスに照らして誰が何を判断しているのかを棚卸しすることで、経営陣の間にある見えない摩擦の原因が明らかになります。
私がホリプロで経験したグループ経営管理の現実
2010年にホリプロで経営企画責任者として、開示業務や子会社管理を含むグループ経営管理を担当していた際、事業ごとに文化も判断基準も異なる経営陣をまとめる難しさを痛感しました。芸能事業とテレビ通販事業では成功の定義そのものが異なり、共通のものさしがなければ議論はかみ合いません。異なる事業を束ねるには、まず「何をもって成功とするか」を経営陣内で言語化することが不可欠だと学びました。
人選で見るべきは「能力」より「意思決定の型」
経営陣の人選というと、実績や専門性といった能力面に目が行きがちです。しかし経営陣として機能するかどうかを分けるのは、意思決定の型が組織に合っているかどうかです。データを重視する人、現場の肌感覚を重視する人、スピードを優先する人など、判断の型は人によって異なります。既存の経営陣とあまりに異なる型の人材を加える場合は、議論の橋渡し役を意識的に配置する必要があります。
200社の支援から見えた「まとまる経営陣」の共通点
200社を超えるプロジェクト型ビジネスの経営管理を支援してきた中で、まとまりのある経営陣に共通していたのは、定例会議とは別に、数字を見ながら議論する場を持っていたことです。プロジェクトごとの予算と実績を全員が同じ画面で見ながら議論すると、感情論ではなく事実に基づいた合意形成がしやすくなります。共通の数字を持つことが、共通の判断基準を持つことに直結するのです。
まとめ
経営陣を束ねるのは、性格の相性でも精神論でもなく、議論の設計と共通のものさしです。優れた経営陣とは仲が良い集団ではなく、本音で議論できる集団のことである。この認識を持てるかどうかが、組織としての経営陣が機能するかどうかの分かれ目になると考えています。