経営ガバナンス

スタートアップのメディア掲載実績

「良いサービスを作っているのにメディアに取り上げてもらえない」という悩みは、多くのスタートアップ経営者が抱えています。多くの人はメディア掲載を運や人脈の問題だと考えがちですが、実際には掲載実績を積み上げるための戦略と型があります。200社を超えるプロジェクト型ビジネスの経営管理を支援してきた経験も踏まえ、この記事ではスタートアップがメディア掲載実績を積み上げていくための具体的な考え方を解説します。

メディア掲載は「広告」ではなく「信用の証明」

メディア掲載の価値は、単に多くの人の目に触れることだけではありません。第三者であるメディアが取り上げたという事実そのものが、取引先や採用候補者、投資家に対する信用の証明として機能します。広告は自社が語る情報ですが、掲載記事はメディアが選んで語った情報です。この違いを理解しているスタートアップほど、掲載実績を単なる話題作りではなく、信用構築の資産として戦略的に積み上げています。

最初の一本を取るための現実的な戦略

実績のないスタートアップが最初のメディア掲載を得るためには、大きなニュースを待つのではなく、業界の専門メディアやニッチなトピックを扱う媒体から狙うのが現実的です。全国紙やテレビにいきなり取り上げられることは稀ですが、専門性の高い記者は新しい切り口のネタを常に探しています。小さな媒体での掲載実績が、次の媒体からの信用につながるという積み上げの構造を理解しておく必要があります。

数字とストーリーの両方を用意する

記者が記事にしたくなるのは、数字の裏付けとストーリーの両方がそろった情報です。「導入社数が3倍になった」という数字だけでは記事になりにくく、「なぜそれが実現したのか」という背景の物語があって初めて取材の価値が生まれます。プロジェクト単位の実績データを日頃から可視化しておくことは、こうした数字の裏付けを必要なタイミングですぐに提示できる体制にもつながります。

経営者自身が語れる状態を作っておく

メディア取材において、広報担当者ではなく経営者本人が事業への思いや業界の課題を自分の言葉で語れるかどうかは、記事の質を大きく左右します。私自身、200社を超える企業の経営支援を通じて、経営者が数字と現場の両方を自分の言葉で説明できる会社ほど、取材依頼が繰り返し来るようになる傾向を見てきました。経営者自身が発信できる状態は、掲載実績を継続的に生み出すための土台になります。

一度の掲載を「実績」に変える横展開

メディアに一度取り上げられただけで満足してしまうスタートアップは少なくありませんが、その掲載記事は自社サイトや採用ページ、営業資料など様々な場面で二次活用できる資産です。掲載実績として一覧化し、次の取材依頼が来た際に過去の実績として提示できるようにしておくことで、メディア側の信頼度も上がります。一本の掲載を点で終わらせず、線としてつなげていく発想が重要です。

掲載実績とIR・採用の意外なつながり

メディア掲載の効果は営業や認知にとどまりません。エンプレックスの上場準備に携わっていた経験からも、掲載実績の積み重ねは投資家に対する会社の認知度を底上げし、採用市場においても候補者の応募動機を後押しする材料になります。事業の中身が同じでも、外部からどう見えているかという情報の蓄積が、資金調達や人材獲得の場面で確実に差を生みます。

まとめ

スタートアップにとってのメディア掲載実績は、偶然の産物ではなく、日々の事業実績を語れる形に整え、発信し続けた結果として積み上がっていくものです。メディア掲載は待つものではなく、積み上げるものである。この意識を持って地道に実績を重ねていくことが、遠回りに見えて最も確実な認知拡大の方法だと考えています。

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