ご挨拶

コラム執筆者紹介 ー 古谷幸治

神奈川県横浜市出身、プロジェクト管理会計士として200社を超える企業のコンサルティングに携わってきた古谷幸治が、このコラムを始めるにあたって自己紹介します。不動産再生の現場から出発し、CFO、経営企画、新規事業、そして起業へ——プロジェクトという単位で経営を見つめ続けてきた30年あまりの歩みと、これからこの場所でお伝えしていきたいことを、少し長くなりますが綴らせてください。

はじめに

はじめまして。株式会社プロジェクト・イノベーション代表取締役CEOの古谷幸治です。神奈川県横浜市の出身で、「プロジェクト管理会計士」として、プロジェクト型ビジネスにおける経営管理を専門にキャリアを重ねてきました。工業社会から知識社会へと軸足が移っていくなかで、私は自らを「知識労働者の生産性を測る伝道師」と位置づけ、プロジェクトごとの採算管理の仕組みをつくるプロフェッショナルとして、これまで200社を超える企業のコンサルティングに携わってきました。このコラムの第1回として、まずは私自身のこれまでの歩みを、少し丁寧にご紹介させてください。経歴を並べると業種も役職も一貫していないように見えるかもしれませんが、根っこにある問題意識はずっと変わっていません。それは「プロジェクトという単位で、会社の数字と人の働きをどう正しく結びつけるか」という一点です。

原点:1991年、建設業界での再生の現場

キャリアの出発点は1991年、不動産デベロッパー「朋友建設」への新卒入社でした。配属されたのは財務部です。入社してわずか2年後、会社は和議(民事再生)を経験することになります。バブル崩壊後の厳しい再生業務の現場で、数字が合わない中でどう会社を立て直すか、キャッシュフローと真正面から向き合う日々を過ごしました。決算書の数字を眺めているだけでは何も変わらない、現場に出て案件ごとの実態をひとつずつ確認しなければ本当の問題は見えてこない——そのことを、まだ20代だった当時に骨身に染みて学びました。この経験は、その後のキャリア全体を貫く「数字で経営を語る」という原点になっています。そして、建設業界というプロジェクト単位で採算を管理する業種に身を置いたことが、後年たどり着く「プロジェクト管理会計」という専門性の土台を形作ることになりました。

2002年、エンプレックスでCFOに就任

2002年、アクセンチュア出身のメンバーが立ち上げたITCRMソフトウェア会社「エンプレックス」(現SCSK、東証プライム)に参画し、取締役CFOに就任します。経営管理、経営企画、そして上場準備という、スタートアップから成長企業へと駆け上がるフェーズに必要な経営基盤づくりのすべてに携わりました。資金繰り表と睨めっこする毎日から、月次決算の体制づくり、そして証券会社・監査法人とのやり取りまで、経営管理という仕事の全工程をこの時期に一通り経験させてもらったと思っています。この過程で生まれたのが、プロジェクトバジェット・マネジメントシステム「eMplex PBM」です。単なる会計システムではなく、プロジェクトごとの予算・実績・見通しをリアルタイムで可視化する仕組みとして、現場のニーズに合わせながら地道に磨き上げていきました。

業種を越えて体系化した「プロジェクト管理会計」

エンプレックス時代に特に力を注いだのは、不動産建設業で培った会計知識をベースに、映像制作業やソフトウェア開発/システムインテグレーション、ITサービス業など、業種の異なる複数のプロジェクト型ビジネスで経営管理の経験を積み重ねることでした。「儲かっているはずなのに現金がない」「進行中の案件がどれだけ利益を生んでいるか分からない」——業種を超えて繰り返し直面したこうした共通の悩みと向き合う中で、業種を横断して通用する「プロジェクト管理会計」という手法を自ら体系化するに至りました。会計ソフトが得意とする「終わった後の正確な実績把握」と、経営が本当に必要としている「進行中の着地見込み」との間には、いつも大きな溝があります。その溝を埋める仕組みをつくることこそが、自分の専門性だと考えるようになったのもこの時期です。コンサルティングを行った企業は200社を超え、私が磨いてきたフォーキャストマネジメント手法は、業界内でも大きな支持をいただいています。

2010年、ホリプロへ。経営企画と新規事業の両立

エンプレックスの事業譲渡を経て、2010年には芸能プロダクション「ホリプロ」(当時東証一部)へと大きく舞台を移し、経営企画責任者として開示業務や子会社管理などグループ経営管理を担当しました。財務・管理会計のプロフェッショナルとして数字の世界を突き詰めてきた一方で、この時期には新規事業開発にも積極的に携わり、テレビ通販事業の責任者として事業そのものを推進する立場も経験しています。数々のテレビ通販ブランドやタレントブランドのプロデュース、キャスティングサービスの立ち上げなど、「管理する側」だけでなく「事業をつくる側」の経験を積めたことは、その後の起業への大きな糧となりました。数字を締める側と、数字を生み出す側の両方に立ったことで、経営管理という仕事の見え方が大きく変わったのを覚えています。

2020年、独立という選択

2020年、株式会社プロジェクト・イノベーションを設立し、代表取締役CEOに就任しました。不動産、IT、芸能、通販と、一見すると脈絡のない業種を渡り歩いてきたように見える私のキャリアですが、その根底には常に「プロジェクトという単位で、人と数字と成果をどう結びつけるか」という一貫した問いがありました。知識労働の価値は、工業社会のように時間や工数だけでは測ることができません。だからこそ、プロジェクトごとの採算管理を通じて、知識労働者一人ひとりの生産性を正しく可視化する仕組みが必要だと考え、独立という道を選びました。会社員として仕組みをつくる立場から、その仕組み自体をプロダクトとして世に問う立場へ——遅いスタートだったかもしれませんが、これまでの経験すべてを注ぎ込める挑戦だと感じています。実際に独立してみると、会社員時代には見えていなかった景色もたくさんありました。誰かの決裁を待つのではなく、自分たちの仮説を自分たちの言葉で経営者に伝え、その場で意思決定に関わっていく緊張感と手応えは、何物にも代えがたいものです。

eMplexシリーズという挑戦

現在は、名刺交換を起点にプロジェクトを中心としたBtoB CRMの世界観を、「eMplex」シリーズとして展開しています。eMplex J.A.R.V.I.S.、eMplex PBM、eMplexグループウェア、eMplexワークフロー、eMplex与信反社チェック、eMplexタイムシート、eMplex MA(BtoB CRMマーケティング)、eMplex SFA、eMplexフォーキャスト、eMplex経費精算、eMplex for TOKYO PRO Market IPO、eMplex HR、eMplexリスト&メール営業ツール、そしてFrontier Dashboard——こうしたプロダクト群を通じて、プロジェクト型ビジネスに関わる経営管理のあらゆる局面をカバーしようとしています。ひとつひとつは地味な機能に見えるかもしれませんが、すべてが「プロジェクト単位で経営を見る」という一つの思想でつながっています。

「人脈の森」に込めた想い

「人脈の森」も、このeMplexラインナップの一つとして生まれたプロダクトです。長年、財務・管理会計という「数字」の世界に軸足を置いてきた私が、あえて「人脈」という一見数値化しづらいテーマに取り組んだのには理由があります。プロジェクト経営を突き詰めていくと、最終的にすべての成果は「誰と、どんな信頼関係を築けているか」という一点に帰結することに、私自身、何度も気づかされてきたからです。予算も、フォーキャストも、採算管理の仕組みも、それを動かすのは結局のところ人であり、人と人との関係性にほかなりません。どれほど精緻な予実管理の仕組みを整えても、それを運用するのは人であり、案件を引き寄せてくるのもまた人と人との信頼関係です。

人という資産を、農耕型で育てる

名刺交換から生まれる「人」というプロジェクト最大の資産を、狩猟型ではなく農耕型で、誠実に可視化し育てていく——それが「人脈の森」というプロダクトに込めた想いです。数字の世界を長く歩んできたからこそ、人との関係もまた、感覚や気合いではなく、仕組みとして誠実に積み重ねていけるはずだと、私は信じています。名刺交換した瞬間の熱量は、時間が経てば必ず薄れていきます。その熱量が薄れる前に、誰と、いつ、どんな話をしたのかを記録し、次に会うきっかけを仕組みとして作っておく。そうした地道な積み重ねこそが、プロジェクトという単位で成果を生み出す土壌になると考えています。

最後に残るのは、数字ではなく人

不動産、IT、芸能という異なる業種を渡り歩く中で、いつも最後に残ったのは「誰と仕事をしてきたか」という記憶でした。数字を突き詰める仕事をしてきたからこそ、最後に残るのは数字ではなく人だと、実感を持って言うことができます。決算書の数字は毎期リセットされますが、その数字をつくった人たちとの関係は、業種やフェーズが変わっても不思議とつながり続けてきました。

200社の現場で見えてきた課題

200社を超える現場に入らせていただく中で、私が繰り返し痛感してきたのは、プロジェクト型ビジネスの多くが「経営管理の仕組み」を持たないまま規模だけを拡大させてしまうという現実です。売上は伸びているのに手元のキャッシュが増えない、案件ごとの採算がブラックボックスのまま次の受注に走ってしまう——そうした企業を数字の面から立て直す仕事は、決して華やかではありませんが、経営の土台を静かに、しかし確実に強くしていく仕事だと考えています。多くの場合、原因は担当者の能力不足ではなく、仕組みそのものが存在しないことにあります。だからこそ私は、コンサルタントとしてだけでなく、その仕組みそのものをプロダクトとして形にし、より多くの経営者・実務家に届けたいと考え、今の事業に取り組んでいます。たとえば、受注が好調で売上は前年を大きく上回っているのに、資金繰りは年々苦しくなっているという相談を受けることは少なくありません。話を伺うと、案件ごとの実行予算と実績を突き合わせる仕組みがなく、赤字案件の存在に誰も気づけていなかった、というケースがほとんどです。

「プロジェクト管理会計士」という肩書きに込めた意味

余談ですが、「プロジェクト管理会計士」という肩書きは、公的な資格の名称ではありません。私が自らの専門性を一言で表すために名乗り始めた、いわば造語です。工業社会においては、工場のラインをどれだけ効率的に稼働させるかが生産性の指標でした。しかし知識社会では、価値を生み出す単位は「工場」ではなく「プロジェクト」に移り変わっています。にもかかわらず、多くの企業の会計・管理の仕組みは、いまだに工業社会の発想のまま——つまり、部門や勘定科目という単位でしか数字を捉えられていません。プロジェクトという単位で予算・実績・見通し・人の稼働を横串で管理できて初めて、知識労働者一人ひとりの生産性が正しく評価され、正当な対価にもつながっていく。私はそう信じています。「プロジェクト管理会計士」という肩書きは、この考え方を体現する仕事を、これからも続けていくという、自分自身への宣言でもあります。

このコラムについて

このコラムでは、プロジェクト管理会計というテーマを軸に、建設業の実務から上場準備、経営会議のあり方、FP&Aやガバナンスの話まで、プロジェクト型ビジネスの経営に関わるさまざまな論点を、実務家としての目線でお伝えしていきます。教科書的な理論だけでなく、200社を超える現場で実際に見聞きしてきた事例や失敗談も、可能な範囲で織り交ぜていきたいと思っています。「世界一のプロジェクト管理会計メディア」を目指すこの場所で、これから多くの実践知を積み重ねていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。更新の頻度やテーマは試行錯誤しながらになると思いますが、読んでくださる方の会社の数字と、そこで働く一人ひとりの頑張りが、少しでも正しく報われる助けになればと願っています。

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