行動特性と評価基準の基礎
行動特性(コンピテンシー)とは何か
行動特性とは、高い成果を継続的に出している人に共通して見られる、具体的な行動のパターンのことを指します。「積極性がある」「リーダーシップがある」といった抽象的な性格特性ではなく、「会議で発言が少ないメンバーに個別に意見を確認しに行く」といった、観察可能な行動レベルまで具体化する点が特徴です。結果だけでなく、その結果に至った行動そのものを評価対象にすることで、まだ成果が数字に表れていない社員の成長過程も正当に評価できます。
結果だけを評価すると再現性のある成長が生まれない
結果指標だけで評価を行うと、たまたま良い案件に当たった社員が高く評価され、地道な努力を積み重ねている社員が正当に評価されないという不公平が起こりがちです。また、結果しか見なければ「なぜその結果が出たのか」という再現可能なノウハウが組織に蓄積されません。行動特性を評価に組み込むことで、成果を生んだ具体的な行動が言語化され、それを他の社員にも共有できる組織の資産に変えることができます。
朋友建設時代に見た「数字が合わない中での行動」の価値
私が新卒で入社した不動産デベロッパーの朋友建設では、入社2年後に会社が民事再生を経験し、数字が思うように合わない厳しい状況の中で日々の業務にあたりました。その渦中で会社を支えていたのは、目先の数字よりも、粘り強く関係者と向き合い、誠実に情報を開示し続けるという地道な行動を取り続けた人たちでした。結果が出しにくい局面ほど、行動特性という視点で人を評価することの意味を、身をもって学んだ経験です。
行動特性は業種・職種によって異なる
行動特性は万能の一覧表を作れば済むものではなく、業種や職種、さらには企業のフェーズによって求められる行動が異なります。営業職に必要な行動特性と、プロジェクトマネージャーに必要な行動特性は当然違いますし、創業期のスタートアップと成熟した組織でも求められる行動は変わります。自社の実際のハイパフォーマーを観察し、その行動を分解するところから始めなければ、絵に描いた餅の評価基準になってしまいます。
評価基準に落とし込む際の3つの落とし穴
行動特性を評価基準に落とし込む際、多くの企業が陥る落とし穴が3つあります。1つ目は項目を増やしすぎて評価者が使いこなせなくなること、2つ目は抽象的な言葉のまま項目化してしまい観察可能な行動になっていないこと、3つ目は一度作った基準を見直さず形骸化させてしまうことです。評価項目は5〜7個程度に絞り込み、具体的な行動例を添えた上で、定期的に見直す運用を前提に設計することが実務上のコツです。
行動特性と数字の評価は両輪で機能する
行動特性による評価は、数字による成果評価を否定するものではなく、両輪として組み合わせることで力を発揮します。プロジェクト型のビジネスであれば、プロジェクトごとの予算・実績という数字の評価軸と、そこに至るまでの行動特性という評価軸を併せて見ることで、短期的な数字と中長期の人材育成の両方に目を配ることができます。200社以上の支援を通じて、この両輪がそろっている会社ほど評価への納得感が高いと実感しています。
まとめ
行動特性を評価に組み込むことは、社員を細かく監視するためではなく、成果に至るまでの過程を正当に認め、再現性のある成長を組織に根づかせるための取り組みです。評価とは、結果を裁くものではなく、行動を育てるものだと言えるでしょう。