プロジェクト管理会計 VOL.20「FP&AとCFO組織の最前線」
VOL.20のゲストとCFO組織の課題感
今回のVOL.20には、従業員数が数年で3倍に拡大したIT企業でCFOを務めるゲストをお迎えしました。ゲストは、組織拡大のスピードに経営管理の体制が追いつかず、月次決算は締まるもののそこから先の分析や提言が後手に回っていたという課題感を率直に語ってくれました。この課題は特別なものではなく、成長期の企業の多くが直面するものです。放送では、この状況からどのようにCFO組織とFP&A機能を立て直していったのかが議論の中心になりました。
FP&AはCFO組織の「中」に置くべきか「外」に置くべきか
対談で興味深かったのは、FP&Aを経理財務部門の内部に置くか、事業部側に近い独立した機能として置くかという組織設計の議論です。ゲストの会社では当初、FP&Aを経理の延長として社内に置いていましたが、事業部との距離が縮まらず、最終的に事業企画に近い位置に再配置したところ、現場との連携が格段に良くなったといいます。組織図上の配置は些細なことに見えて、実は情報の流れやスピード感を大きく左右するという指摘に、私自身も強く共感しました。
CFO組織に必要な「翻訳者」としての機能
ゲストが繰り返し強調していたのは、CFO組織には経営の言葉を現場の言葉に、現場の数字を経営の言葉に「翻訳」する機能が必要だという点です。理由は、経営会議で語られる成長戦略と、現場が日々追いかけている案件別の数字とは、そのままでは接続しないからです。ゲストの会社では、FP&Aメンバーが定期的に事業部の会議に同席し、経営方針を現場の目標に落とし込む役割を担うようにしたことで、両者の温度差が縮まったとのことでした。翻訳者としての機能が組織の一体感を生みます。
CFO組織拡大期に起きやすい「属人化」の罠
急成長企業のCFO組織では、拡大のスピードに人材育成が追いつかず、特定の担当者しか全体像を把握していないという属人化が起きやすいという指摘もありました。私自身、これまで200社を超える企業の経営管理を見てきた中で、キーパーソンの退職をきっかけに管理体制が一気に崩れてしまった企業をいくつも見てきました。ゲストの会社では、この対策として、システム上に予算・実績データを集約し、誰が見ても同じ情報にアクセスできる環境を整えたことが、属人化解消の決め手になったそうです。
私がホリプロで経験したグループ経営管理の難しさ
私自身、2010年にホリプロで経営企画責任者を務めていた際、子会社ごとに数字の粒度も報告フォーマットもバラバラで、グループ全体の実態を把握するのに苦労した経験があります。芸能プロダクションという一見特殊な業界でも、案件・プロジェクトごとの採算管理という本質は他業種と変わらないことに気づき、そこから自分なりの管理会計の型を作っていきました。この経験は、今回のゲストが語っていた組織拡大期の課題と重なる部分が多く、対談中も自然と過去の記憶が蘇りました。
これからのCFO組織とFP&Aの理想的な関係
放送の終盤では、これからのCFO組織はFP&Aを単なる一機能としてではなく、経営と現場をつなぐハブとして位置づけるべきだという方向性で意見が一致しました。CFOが経営会議での意思決定に集中できるのも、FP&Aが日々の予実データを整え、論点を整理してくれているからこそです。ゲストは「CFOとFP&Aは車の両輪」と表現しており、この言葉は、これから経営管理体制を整えようとする多くの企業にとって、目指すべき姿を端的に示していると感じました。
まとめ
VOL.20では、成長企業のCFO組織がどのようにFP&A機能を育ててきたかを、生々しい試行錯誤とともに語っていただきました。組織図をきれいに整えることよりも、経営と現場の間の翻訳機能を誰がどう担うかを考えることが本質です。CFO組織とは、作るものではなく、対話を重ねながら育てていくものである。この放送が、皆さまの組織づくりの参考になれば幸いです。