企業成長を支える人事考課の本質―評価に納得感がない組織の共通点と処方箋
人事考課が「仕分け」で止まってしまう理由
人事考課という言葉を聞くと、多くの人がまず査定や順位づけを思い浮かべます。もちろん処遇に差をつける機能は必要ですが、それだけを目的にしてしまうと、評価される側は自分が何を頑張れば認められるのかが見えなくなります。まるで、行き先の書かれていない地図を渡されるようなものです。地図に行き先が書かれて初めて、人は自分の位置と進むべき方向を理解できます。
評価基準は「行動レベル」まで翻訳して初めて機能する
結論から言えば、評価基準はできる限り具体的な行動レベルまで分解する必要があります。抽象的な「主体性」「協調性」といった言葉のままでは、評価者によって解釈がぶれてしまうからです。理由は単純で、人は自分にとって都合の良いように抽象語を解釈する生き物だからです。例えば「主体性」を「担当外の課題でも、気づいた時点で上司に一報を入れている」という行動レベルまで具体化するだけで、評価者間のばらつきは大きく減ります。基準は翻訳されて初めて機能します。
評価と育成を切り離さず、対話の材料にする
評価面談を結果を伝える場にしてしまうと、部下にとっては一方的な通告の時間になってしまいます。理由は、評価が未来の成長につながっていると感じられないからです。評価面談の半分の時間を「次にどう成長するか」の対話にあてるだけで、面談の空気は驚くほど変わります。ある会社では、評価面談の最後に必ず「来期、何を新しく試したいか」を本人に語ってもらう時間を設けたところ、離職率が目に見えて下がりました。評価は振り返りであると同時に、次への招待状でもあるのです。
個人の評価と、チーム・プロジェクトの成果をつなげる
知識労働の現場では、個人の頑張りだけでは成果が生まれないことがほとんどです。プロジェクト単位で動く組織であればなおさら、個人の評価がチーム全体の採算や納期と切り離されていると、評価者も被評価者も納得感を持てません。だからこそ、個人考課の項目の中に、関わったプロジェクトの成果指標を組み込むことが有効です。数字だけで人を測るのではなく、数字を対話のきっかけとして使うという発想の転換が鍵になります。
評価者どうしの目線をすり合わせるキャリブレーションの場を持つ
同じ行動を見ても、評価者によって評価が甘くなったり辛くなったりすることは避けられません。理由は、評価者一人ひとりが異なる現場・異なる部下しか見ていないため、比較の物差しがどうしてもずれてしまうからです。評価確定の前に、評価者どうしが集まって「なぜこの評価にしたのか」を突き合わせるキャリブレーション会議を設けるだけで、評価のばらつきは大きく是正されます。手間はかかりますが、この一手間を省いた組織ほど、後から「評価が不公平だ」という声に悩まされることになります。
経営企画の現場で見えてきた、評価される側の本音
私は2010年に芸能プロダクションのホリプロで経営企画責任者を務め、開示業務やグループ会社の管理に携わりました。組織の規模が大きくなるほど、現場の頑張りは経営陣の目から見えにくくなります。数字だけを追いかけると、頑張っている人ほど「見てもらえていない」という孤独を感じやすいのだと、当時何度も痛感させられました。だからこそ私は、独立後に株式会社プロジェクト・イノベーションを設立し、知識労働者一人ひとりの生産性を正しく可視化する仕組みづくりに力を入れています。人事考課もまた、この見える化の延長線上にあるべきものだと考えています。
まとめ
人事考課は、人を裁くための道具ではなく、会社の成長と一人ひとりの働き方をつなぐ翻訳装置です。基準を具体的な行動に翻訳し、評価を未来への対話に変え、個人の頑張りをチームの成果とつなげる——この3つを地道に積み重ねることが、納得感のある評価制度への一番の近道です。「評価されている」ではなく「見てもらえている」と感じられる組織を、一つずつ増やしていきたいものです。プロジェクト単位での成果や工数を可視化し、人事考課にも活用できる仕組みとして、私たちは「eMplex PBM」を提供しています。