人材マネジメント

プロジェクト間の兼務・マルチアサイン管理とバーンアウト防止の実務

「稼働率100%超え」を優秀さの証だと捉えていませんか。複数プロジェクトを同時に抱える兼務体制は生産性を高める一方、管理を誤ると離職やバーンアウトの温床になります。人材マネジメントの視点から実務対応を整理します。

結論、マルチアサインは「効率化の手段」であり「常態」にしてはならない

複数のプロジェクトに一人のメンバーを掛け持ちさせるマルチアサインは、限られた人材で幅広い案件に対応するための有効な手段です。しかし、これを恒常的な体制として当然視してしまうと、個々のメンバーの負荷が見えにくくなり、気づかないうちに離職やメンタルヘルスの問題につながるリスクを抱えることになります。マルチアサインは、あくまで一時的な調整弁として位置づけ、常態化させないという原則を組織として持つ必要があります。

なぜマルチアサインの負荷は見えにくいのか

一つのプロジェクトの管理者は、自分の案件におけるそのメンバーの稼働状況しか把握できません。複数の案件を横断してその人がどれだけの総稼働を抱えているかは、案件別の管理では見えず、全社的な視点を持つ人事部門や経営陣が意識的にデータを集約しない限り、実態は誰の目にも入らないまま進んでいきます。この「誰も全体を見ていない」という構造そのものが、マルチアサインの負荷を見えにくくしている根本的な原因です。

稼働率データを個人単位で横断的に可視化する

対応の第一歩は、プロジェクトごとに分断されているタイムシートデータを、個人単位で横断的に集計する仕組みを持つことです。ある個人が抱える複数案件の稼働時間を合算し、標準稼働時間に対してどれだけ超過しているかを継続的にモニタリングすることで、負荷の高いメンバーを早期に特定できます。この集計を月次でまとめて確認するだけでなく、週次で異常値を検知できる運用にしておくことが、問題の早期発見につながります。

アサイン判断の権限を一元化する

各プロジェクトマネージャーが個別に「このメンバーを自分の案件にも入れてほしい」と依頼を重ねていくと、誰も全体像を把握しないまま、一人のメンバーに負荷が積み重なっていきます。アサインの最終判断を、リソースマネジメントの機能を持つ部門や役割に一元化し、新たな案件へのアサイン依頼が来た際には、そのメンバーの現在の総稼働状況を必ず確認した上で判断する運用にすることが、過負荷を未然に防ぐ仕組みになります。

本人の自覚と組織の把握のズレに注意する

負荷の高いメンバーほど、責任感の強さから「自分はまだ大丈夫」と過小評価しがちです。本人の自己申告だけに頼った負荷管理では、限界に近づいていることに本人自身が気づけないまま進んでしまうリスクがあります。定量的な稼働データと、定期的な1on1での対話を組み合わせ、本人の感覚と客観的なデータの両面から負荷の兆候を捉えることが、バーンアウトの予防に不可欠です。

バーンアウトの予兆をどう捉えるか

バーンアウトは、ある日突然発生するものではなく、稼働率の高止まりが数か月続いた後に、成果物の質の低下や、それまで積極的だった発言が減るといった変化として現れることが多くあります。稼働率という定量データだけでなく、1on1での様子や、周囲からのちょっとした違和感の共有を、人事とプロジェクトマネージャーの間で拾い上げる仕組みを持つことが、予兆を早期に捉えるための実務上の工夫になります。

マルチアサインを前提とした評価制度の見直し

複数案件を掛け持ちするメンバーの評価を、単一案件の成果だけで判断してしまうと、負荷の高さに対する正当な評価が得られず、モチベーションの低下につながります。評価制度において、担当する案件数や兼務による調整業務の負荷も評価要素として明示的に組み込むことで、マルチアサインを担うメンバーへの公正な評価を実現できます。評価制度とリソース管理は、別々の仕組みではなく、連動させて設計するべきものです。

よくある質問

Q.稼働率何パーセントを超えたら危険信号と考えるべきですか。A.業種やメンバーの経験によって適正値は異なりますが、標準稼働に対して継続的に120%を超える状態が2か月以上続く場合は、負荷の再配分を検討すべき目安の一つとされています。Q.本人が兼務を希望している場合はどう対応すべきですか。A.本人の希望であっても、客観的な稼働データを継続的に確認し、限界に近づいた兆候があれば早めに対話する姿勢を保つことが重要です。

ホリプロでの複数事業兼務のマネジメント経験

私がホリプロで経営企画責任者を務めていた際、複数の新規事業を同時に立ち上げる中で、限られた人材が複数の事業を兼務する体制を組んでいました。当初は本人の意欲を尊重して負荷の調整を後回しにしていましたが、ある時期にキーパーソンの一人が疲弊し、判断力が明らかに落ちていることに気づき、急遽アサインを見直した経験があります。この経験から、負荷は本人の意欲とは別軸で、組織として定量的に管理すべきものだと強く実感しました。

業種による応用ポイントの違い

マルチアサインの負荷は業種によっても現れ方が異なります。ITサービス業では複数の開発案件を並行して担当するエンジニアの認知的な切り替えコストが負荷として蓄積しやすく、コンサルティング業では移動を伴う複数クライアント対応が体力的な負荷として現れやすい傾向があります。映像制作業では撮影スケジュールの重複による長時間労働が典型的なリスクです。自社の業種でどのような形で負荷が蓄積しやすいかを理解した上で、モニタリングの重点を定めることが実務上の工夫になります。

eMplex PBMでの実現イメージ

eMplex PBMのタイムシート機能では、個人ごとに複数のプロジェクトへの入力を一つの画面で行える設計になっており、集計側では個人単位で全案件の稼働を横断的に合算した稼働率を自動的に算出できます。標準稼働時間に対する超過状況をダッシュボードで確認できるため、リソースマネジメントの担当者は、案件別の管理では見えない個人単位の負荷を早期に把握し、アサインの調整に役立てることができます。

マネジメント層自身のマルチアサインにも目を配る

負荷管理の議論は現場の担当者に focus が向きがちですが、複数プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャー自身もマルチアサインの当事者であることが多くあります。管理する立場にある人ほど「自分の負荷は後回しでいい」と考えがちですが、マネージャー層が疲弊すると、その影響は担当する複数のプロジェクト全体に広がります。経営陣は、現場メンバーだけでなく管理者層の負荷にも同じ基準で目を配る必要があります。

まとめ

マルチアサインは、限られた人材を有効に活用するための手段である一方、常態化させると個人の負荷が見えなくなり、バーンアウトのリスクを高めます。個人単位での稼働の横断的な可視化、アサイン判断の一元化、評価制度への反映という3つの仕組みが、健全な運用を支える土台になります。eMplex PBMのタイムシート機能は、複数プロジェクトにまたがる個人の稼働状況を横断的に集計できるため、こうしたマルチアサイン管理の実務にも活用いただけます。

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